淡路瓦で包まれた半屋外環境がつくる海に開かれたZEH


淡路島の北端に位置し、海岸からほど近く、明石海峡大橋を望む眺望の良い高台の住宅。都市と自然が近接した場所で、自然エネルギーと自然素材を最大限利用したZEH(ゼロエネルギーハウス)が求められた。


この住宅は、島の東海岸に位置するため、眺望の良い海側に寄せた南北方向に細長いボリューム配置とし、全部屋から海を感じられる平面計画としている。断面は2階を主階として、室内と一体的な大きなテラスを設けている。東側に開かれた建物は、眺望を得られる反面、午前中の浅い角度の日射が室内に入ってきて、夏の日中に室内がオーバーヒートするため、建物の外側にもう一つの外皮を重ね、ダブルスキン状の空間とし、日射を遮蔽しながら、プライバシーを気にせず、窓を開けて風を通すことのできる提案をしている。海は膨大なクールエネルギーの塊であるため、平均気温が4度ほど低い海風を取り込むことで、涼しく快適な半屋外環境をつくっている。


ダブルスキンは、特注形状の淡路瓦で作られている。淡路島は土の質が良く、日本三大瓦の産地として有名である。この住宅では、淡路瓦の職人と協働し、環境シミュレーションによって導き出された3D形状を型に落とし、ダブルスキンを構成する約3000枚の瓦をデザインした。瓦は、夏の日射を遮りながら、冬の日射を取り入れるような形状とすることで、半屋外空間が通年で快適になるように意図されている。1階の外壁も淡路の土壁とし、瓦と合わって、海岸の岩肌とも調和したこの風土に合った外観とした。


建物は、高い断熱性能、高性能サッシによる躯体性能に加えて、地下50mの地熱を利用して全冷暖房のエネルギーを賄い、太陽熱で温まる海側のプール水の温度差を利用して全給湯エネルギーを賄う等、建物の周辺にある身近なエネルギーを積極的に取得することで、建物全体の年間消費エネルギー量をゼロになるように計画している。


建物の中だけに限らず、屋根で集めた雨水を利用した家庭菜園をつくり、地域の果樹を育て、瓦の廃材で外構を設え、太陽光で電気自動車を充電し、第2のリビングとして海岸を利用するなど、生活全体が海や地域に開かれることで、この場所でしかない豊かな暮らしと地球環境への配慮を同時に実現した住まいとしている。

data

所在地:兵庫県淡路市

敷地面積:1,224.79㎡

建築面積:283.55㎡

延床面積:285.28㎡

構造規模:木造2階建

House

淡路島の住宅/ 2018

末光弘和+末光陽子 / 株式会社SUEP.

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